予告しておいてまだ公開していないTonic Functionの記事は腐らないようにじっくりと発酵しております。忘れてなんておりません(口笛〜♪)。
さて、今回はちょっとトレーニングに関するお話です。
現在のロルフィングのBasicトレーニングは、Phase1から3までで終了します。
が、その1年後にsupervisionというクラスに再び参加する必要があります。
私は今年の6月にsupervisionに参加する予定なのですが、その前にAdvanced Rolfer(ロルファーの上級資格を有するロルファー)からMentoring Sessionを3回受ける必要があります。
Mentoring SessionはPhase2とPhase3の間に2回受ける必要があり、全部で5回受けることになります。過去のMentoring Sessionについては、前のブログに記載してあります。
Mentoring Session① by 宮崎良子さん
Mentoring Session② by Christoph Sommer
今後受ける必要がある3回のうち、1回は日本で受けてOKなので、今回は田畑浩良さんにお願いして、Mentoring Sessionを受けて参りました。
田畑浩良さんというロルファー
ロルファーの中では大御所の田畑さんですが、私は今回お会いするのが初めてでした。ドイツでも田畑さんの噂を聞くことはちょこちょこあり、勝手に抱いていた印象は
・ほとんど触らないロルフィング(触るとしても、触れる程度で強い刺激はない)
・イールドを用いたワーク
・「間合い」、「空間」のスペシャリスト
でした。
イールドについては私もまだあまり知らないため詳しい説明は割愛しますが、とにかく「空間を用いて絶大な変化を起こすワークをする」ということで、今まで学んだり経験したロルフィングとはまた異なることが学べると思い、以前からとても興味がありました。
今回は、同じドイツのミュンヘンでトレーニングを終えたロルファーお2人と共にメンタリングセッションを受けて、主に「田畑さんがロルファーとして大事にしていることや心がけていること」、そして「心地よい間合い」について学んで参りました。
田畑さんはとても物腰が柔らかな雰囲気で、私たちの矢継ぎ早に繰り出される質問の嵐にもひとつひとつ丁寧に答えていただきました。
「心地よい間合い」とは
皆さんは、こんなことはありませんか?
・誰かと並んで歩くとき、何となくいつも左側にいる
・やや広い会議室や大部屋で集まるときは、右側、そして後ろ側の席に座ることが多い
・レストランやカフェで食事をするときは、壁を背にした席の方が落ち着く
人は、無意識でも「心地よい空間」、「心地よい間合い」があります。
「パーソナルスペース」なんて言葉もありますね。
人との距離が近すぎたり、遠すぎたりして落ち着かない。そんな経験はありませんか?
・そんなに会話が弾んでいるわけじゃないのに、一緒にいると心地いい人
・逆に人柄はとてもいいし話しやすいはずなのに、なぜか話していると落ち着かない人
これは、「自分と他者との間に必要な空間が守られているかどうか」が影響している場合があります。
ロルフィングでは、この「空間」、「間合い」をとても大事にしています。
それは、「ロルファーとクライアントとの空間」だけでなく、セッションを行う部屋の空間も含めた「環境」のことを指していて、そもそもクライアントが「ここは安全」と感じられない環境では、ロルフィングのセッションは成り立たない、とされています。
ロルフィングだけでなく、例えばアロママッサージや整体などに行ったとき、落ち着かなかったりそわそわしてしまうような環境だと、リラックスできませんよね。
この「リラックス」=身体の副交感神経が優位、という状態こそが、身体が外部からの情報をきちんと受け止められる状態です。
私が色々なところで「ご自身が心地よく感じることが一番大事」としつこく伝えているのは、このためです。
そのためには、クライアントはもちろん、ロルファー自身もちゃんと「ここは安全」と感じている必要があります。ガチガチに緊張している人に身体を触れられたりすると、その緊張が伝わってしまいクライアント側の身体にも大きく影響を与えるので、ロルファーはまず自分の心身を整えることが最優先、とされています。
なので、私はセッションの前には深呼吸をしたり、骨盤や背骨のストレッチをしたり、手の感覚を目覚めさせるためのワークをしたり、なんてことをしています。
そして、特に初めてセッションを受けるクライアントさんの場合、大体は足首をゆっくり触れるところから始めたりしていました。
まだよく知らない人に身体を触られる場合、顔から遠い足からゆっくりと触れた方が自分も安全だと感じますし、クライアントさんにとっても緊張が少ないかなと思っていたからです。
「間合い」が身体に与える影響
今回のメンタリングセッションでは、実際にクライアント役、プラクティショナー役、そしてオブザーバー役と分かれて、実際に「間合い」が身体に与える影響を体感しました。
私がクライアント役のときには、チューニングボードと呼ばれる、ちょっと不安定なボードに乗ってバランスを取った状態で始まりました。
この状態で、プラクティショナー役の方がいる場所、身体の角度などを変え、「どの位置が心地いいか?」を感じるところから始まります。
最初は、バランスを取るために足先がプルプルしていました。力を抜こうとしても、なかなか抜けず、序盤はそこそこ疲れました。
そこでプラクティショナー役の方がいる位置を変えていくと、不思議なもので、同じような距離でも「何となくこのへんにいられた方が落ち着く」という場所があるのです。
そして、「そこにいられると落ち着く」という場所に他者が存在していると、先ほどまで抜こうとしても抜けなかった力がだんだんと抜けていくのがわかりました。
面白いことに、目に見えないはずの空間が何となくイメージで感じられて、適切な間合いになるにつれ、そのイメージは
硬い壁がある感じ→柔らかな球体がある感じ→球体同士がぶつかって混ざり合った感じ
と変化していきました。
「今が適切な間合いだ!」と感じたポジションでは、不安定なボードの上で心地よいポジションを取るために身体が自己調整を始め、プルプルしていた足先はボードの上に吸盤のように張り付き、後半の方は骨盤や背骨がゆらゆら動きながらバランスを取っていることを感じられました。
この状態だと、不安定なボードの上でも身体に力はほとんど入っておらず、永遠にとどまれるような気さえしていました。
「こ、これが触れもせずに身体に絶大な変化を与えるワークか…!」と驚きの体感をした瞬間でした。
私がプラクティショナー役のときは、クライアント役はマッサージテーブルに横たわった状態で同じように自分の位置や身体の角度、距離を変えて「心地いい場所」を探しました。
このときは、不思議なことに同じ場所、同じ身体の向きであっても、「自分が意識する空間」によってクライアント役の身体への影響が変わることを体感しました。
例えば、最初は「自分の周りに球体があるような感じ」で空間を意識していたのですが、クライアント役は「存在感が強すぎて落ち着かない」と感じていたようでした。
なので、意識する空間を「自分の背後」に変えてみたところ、「強すぎた存在感が弱まって、落ち着くようになった」そうなのです。
最終的には互いの空間の相互作用を何となく感じ合い、クライアント役の顎関節が自己調整を始めたり、自分の身体の末端がだんだん温まっていくような感覚があったり、と不思議な体験でした。
今回の経験をロルフィングセッションにどう活かすか?
田畑さんもとても重視されているという、「自分自身が心地いいかどうか」ということは、トレーニング中の経験から大事だと感じていたので、セッション中意識するようにはしていました。
Phase2の先生だったGiovanniが空間の魔術師(勝手に呼んでます)だったので、「空間」や「間合い」の重要さもわかっていたつもりでしたが、正直ここまで大きな身体への影響を体感するとは思っていませんでした。
特に、「自分が心地いい空間」、「クライアントさんが心地いい空間」だけでなく、互いの空間が適切にぴたっとはまり、空間が溶け合って境目がなくなるような間合いができると、身体がワークを受け止められるように適応する早さ、身体の調整のしやすさにも大きく影響するのだと実感しました。
ロルフィングは表層から深層へ、だんだんと繊細な部分や身体の奥深いところにある部分へのワークも増えていきます。
表層でも、深層でも、「身体が受け止められる状態」である環境を作ること。
クライアントさんは優しい方が多いので、様子を伺っても大体の方が「大丈夫」と言ってくださいます。ですが、身体は無意識に反応しています。
このあたりを今後は今まで以上に丁寧に観て、クライアントさんも、私自身も「安全だと感じられる空間」を意識していこうと思います。
さて…あと2回のMentoring Sessionは、ヨーロッパで受けねばなりません。ど、どうしようかな〜